(2011年08月12日)
 
アンドロイド スマートフォンの料金が、ある日突然、従量課金制になったらどうしますか?
そんな出来事が実際に米国で起きました。米国で最大手の通信事業者ベライゾン・ワイヤレスが、スマートフォン向けの通信料金プランから定額制を廃止して、段階的な従量課金プランへ移行しました。このニュースは、日本でも衝撃を持って受け止められました。スマートフォン先進国の米国で定額制が崩れたことで、日本でもそうなる可能性を多くの人々が予期したのでしょう。
実際のところはどうでしょうか。これまでは通信料金については、定額制が普及し、どちらかと言えば金額もゆるやかに下がる傾向が続いていました。ですが、先日、ソフトバンクモバイルの孫社長が決算発表会において「定額制はアンフェア。一部のユーザーが回線の大半を占有している」と発言し「料金体系は欧米のように見直す時期が来る」とまで明言しました。
そもそも、なぜスマートフォンの定額制が廃止されるのでしょうか。その理由は、スマートフォンの性質にあります。以前から、人々の携帯電話の使い方が変化し、通話からデータ通信がメインへと変化してきました。この傾向は、ガラケーと呼ばれるほど高機能な携帯電話が主流となった日本において特に顕著でした。
それが、世界中でスマートフォンが主流となることで、日本だけでなく世界各国でデータ通信量が急増し始めたのです。内蔵カメラの高性能化や、動画や音楽サービスの普及などで、スマートフォンに出入りするデータ量はまだまだ増加する傾向にあります。
携帯電話網のトラフィックが増加することは、以前から指摘されていたことです。しかし、スマートフォンの性能と機能の向上によるトラフィック増加と、スマートフォンの普及速度上昇の両方が同時に起きたことで、携帯電話網のトラフィック増加がかなりの勢いとなっています。
NTTドコモは2011年の予測を当初は600万台としていました。しかし、7月に山田社長が、700万台を越える可能性もあると発言しました。つまり、携帯電話事業者が当初想定していたよりも、スマートフォンによるトラフィックの伸びが上回る可能性が高いのです。
このため、携帯電話通信網の増強のために、新たな投資が必要になっています。ですが、現在主流の3Gでは、すでに電波帯域が限界に近づいています。固定回線ならば、容量が足りなければ新たなケーブルを引くことができますが、電波は有限のため簡単に帯域を増やすということができません。
もちろん電波を管理する国側も、国民の需要が大きく公共性が高い携帯電話に割り当てる電波を増やそうとしています。7月24日にアナログのテレビ放送が終了し、デジタル放送へと移行したことは、まだ記憶に新しいです。アナログ停波の理由のひとつには、通信に適した700MHz周波数帯を携帯電話のために空けるという目的があります。
しかし、これによって増える電波帯域は、すでに携帯電話に利用されている帯域のおよそ2割にも満たないものです。有限の電波帯域の中で、より多くのトラフィックを増やすためには、新たな技術の導入が必要です。それがWiMAXやLTEといった次世代通信技術なのです。NTTドコモは「Xi」、KDDIは「UQ WiMAX」によって、新しい通信網を構築しようとしています。
また、  アンドロイド タブレット 2.2 網以外の電波を利用するという方法もあります。それがWi-Fiによる公衆無線LANです。Wi-Fiは、どちらかといえばパソコンでインターネットを利用するための技術でしたが、スマートフォンではPC向けのインターネットとの親和性が高くなったことで、公衆無線LANを利用するメリットが大きくなりました。
ドコモやソフトバンクは以前からスマートフォンをターゲットにした公衆無線LANサービスを運営していましたが、KDDIも6月からスマートフォン向けの「au Wi-Fi SPOT」を開始しました。このようにキャリアは、次世代通信やWi-Fiを活用することで、少しでも3G携帯電話網への負荷を減らそうとしています。
でも、本当にこれで間に合うのでしょうか? 今の状況に携帯電話事業者は危機感を持って対応にあたっていますが、スマートフォンのトラフィックが今後より伸びる可能性もあります。
例えば、先日KDDIから発表されたWindows Phone端末「IS12T」は、写真共有やソーシャルサービスとの親和性が高く、ほかのスマートフォンOSよりも大きなトラフィックを発生すると言われています。さらに調査会社の予測では、2015年にはWindows PhoneがAndroidに次いで世界で2番目シェアを取るとされています。そうなるとネットワーク増強が必須となり、そのコスト捻出のために従量課金制という選択肢が現実のものとなってしまいます。
冒頭で孫社長の発言を紹介しましたが、アグレッシブな料金プラン構成で携帯電話業界に反響を招いてきたソフトバンクモバイルが、従量制に転換するとなれば、その影響は大きなものとなります。
ですが、日本の携帯電話事業者は、米国と比べれば設備の整備が進んでいるので、当分の間は定額制でも問題ないとの見方が強いです。実際、NTTドコモの山田社長が、Xiの料金体系を現在の従量課金制から、逆に定額制へと移行する可能性に言及しています。もちろん、まだユーザーが少ないXiだからという注釈が付きますが、日本ではしばらくは定額制を続ける余裕がありそうです。
ただ、このスマートフォンのブームが想定外だったのように、今後もさらなる別の要因でトラフィックが一段と爆発する可能性もあります。そうならないためにも、ユーザーとしては3G回線、次世代、Wi-Fi、固定回線などを、場所や状況に合わせて使い分け、少しでもトラフィックを分散させることが必要かもしれません。
 
 

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